ご存知ですか、注目されない感染症(肝炎)が多くの命を奪っていること。

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NGOに登録する医療従事者らむけセミナーで講演・交流

7月19日から26日まで、世界肝炎デー(7月28日)にあわせて来日された、ブルキナファソの2つの患者団体の代表のお二人——ドラマン・カニア博士(ウイルス学研究者、国立ムラズ研究所勤務、患者団体「アソー・エパティット」創設者・名誉会長)とクレール・オルタンス・サノンさん(B型肝炎当事者、患者団体「SOS肝炎ブルキナ」代表)は、アフリカで肝炎対策の研究にとりくむ島川祐輔先生(医師、パスツール研究所、熊本大学客員教授)とともに、国際NGOが開催した、医療従事者らが参加するセミナーで、講演と交流を行いました。

セミナーを開催したのは、日本発祥の国際NGOピースウィンズ・ジャパンが運営する、医療を軸とした災害緊急支援プロジェクト「空飛ぶ捜索医療団”ARROWS”」です。空飛ぶ捜索医療団には、300人以上の医療従事者やレスキュー関係者、ロジスティシャンなどが、災害時などに現場に駆けつけるため、「ロスター(登録隊員)」として登録されています。そのロスターむけのセミナーに、ブルキナファソからのお二人と島川先生(ピースウィンズ・ジャパンが開始したブルキナファソにおける肝炎対策支援プロジェクトのアドバイザーにも就任)が講師・ゲストとして、招待されました。

アフリカにおけるウイルス性肝炎対策について講演される島川祐輔先生。

セミナーでは、空飛ぶ捜索医療団の坂田大三医師から、「ピースウィンズと空飛ぶ捜索医療団では、災害時の『未治療死』をなくすことに取り組んできたが、肝炎などの感染症も、同じく、適切な治療が受けられれば救える命が、治療を受けられないために失われる『未治療死』の問題です。この感染症の『未治療死』をなくすことにも取り組みたい」と、ピースウィンズ・ジャパンが、今回のブルキナファソからのお二人の来日もきっかけに、ウイルス性肝炎対策に取り組むことになったことをお話されました。

それにつづけて、島川祐輔先生がアフリカにおけるB型肝炎対策について講演され、カニア博士、サノンさんもまじえて、参加者のみなさんからのご質問にも答えました。

全部で1時間という短い時間でしたが、参加者の方からは、非常に積極的な感想が寄せられました。下に、その一部を紹介します。

「国際保健の分野の中で、特に途上国の感染症治療に興味があったため、アフリカのリアルが聞けてよかった。」

「担当者の方々の思いが伝わりました。B型肝炎の世界における状況、全然知りませんでした。大変勉強になりました。」

「思春期までにすでに沢山の子ども達が感染してしまっているというのは衝撃的でした。」

「アフリカの現状がよくわかった。課題は物品問題もあるが、やはり知識をどう伝えるかが重要課題で、これがなかなか浸透するまでに時間と労力のかかるものだと、どんな支援でも共通課題であると認識できた。」

「C型肝炎に続き、B型肝炎の治療方法が確立できたら、どんなに沢山の人が幸福になれるか、と考えると胸が熱くなりました。」

「ピースウィンズが感染症もやるのかと、とてもワクワクしました。」

セミナーには、「ロスター(登録隊員)」のほか、スタッフなども含めて60人近い方が参加されました。

ピースウィンズ・ジャパンでは、ブルキナファソへの肝炎対策支援プロジェクトとして、現地に医師を含むチームを派遣して現地ニーズ調査を行うこと、また、肝がん予防に有効な検査機器フィブロスキャン1台を贈呈して、そのフィブロスキャンも活用して、途上国における肝炎対策支援のモデルとなりうるプロジェクトを進めることを準備中。フィブロスキャンの購入費用のクラウドファンディングにも取り組んでいます。

佐賀県の江口病院を訪問

7月19日から26日まで来日した、西アフリカ・ブルキナファソの2つの肝炎患者団体の代表(ドラマン・カニア博士=国立ムラズ研究所、患者団体「アソー・エパティット」創設者・名誉会長、と、クレール・オルタンス・サノンさん=B型肝炎当事者、患者団体「SOS肝炎ブルキナ」代表)は、アフリカでB型肝炎の研究にとりくむ島川祐輔医師(パスツール研究所、熊本大学客員教授)とともに、来日期間の最後に、佐賀県の江口病院を訪問しました。

病院見学時に、江口先生(左から4人目)ほか、江口病院の皆様や、実行委員会のメンバーとともに。

江口病院では、理事長の江口ゆういちろう先生をはじめ、多くのスタッフの皆様から、病院の見学や検査の実施、さらには、夜は佐賀県のおいしい食べ物で歓迎会を開いてくださるなど、大変あたたかい歓迎を受けました。

病院見学では、江口先生から病院内をくまなくご案内いただき、また、佐賀県の肝炎医療コーディネーターのとりくみや、こんど日本から贈られる検査機器フィブロスキャンについて、説明を受け、懇談をしました。

佐賀県の広報物を手に話し合う(左から江口先生、サノンさん、カニアさん、島川先生)。

佐賀県では、長く肝がん死亡率全国ワースト1位が続いていましたが、江口先生が佐賀大学の肝疾患治療センターのセンター長だった当時、検査・診察・治療をうながす啓発活動に取り組み、ワースト1位から脱却。江口先生は、いまも厚生労働省の研究班の代表をつとめ、また、肝がんの非常に多いモンゴルなどで、肝炎対策の支援にも取り組んでいらっしゃいます。実行委員会のオンライン学習会でも、モンゴルでの取り組みの経験などを、ブルキナファソの方をふくめて共有してくださるなど、協力していただいてきました。

ブルキナファソからのお二人も、「佐賀県で行ってきたような肝炎患者とのコミュニケーションの改善、啓発活動は、ブルキナファソでも参考になる。帰ったら、大いに取り組みたい」と話していました。

肝炎の検査をしてもらうサノンさん。
フィブロスキャンを手にするカニア博士。

肝臓が硬くなってきた方に治療を行うことは、肝がんの予防のために大切であり、その肝臓の硬さを容易に測定できるのが、フィブロスキャンです。江口先生は、病院での診察はもちろん、モンゴルでの肝炎対策支援などでも、ポータブルのフィブロスキャンを持ち歩き、活用されています。

今回、日本のNGOからブルキナファソの2団体が活用できるように、ポータブルのフィブロスキャンが贈られるプロジェクトも始まっています(クラウドファンディングはこちら)。

この訪問のようすは、NHKやサガテレビ、佐賀新聞に取材していただきました。その日の夕方のニュースでも紹介されました。

患者会の事務所を訪問(サノンさん)

カニア博士が熊本大学の研究室を訪問された頃、ブルキナファソで一番歴史の古い肝炎患者団体「SOS肝炎ブルキナ」代表のクレール・オルタンス・サノンさん(B型肝炎当事者)は、東京肝臓友の会の事務所を訪問して、交流しました。

東京肝臓友の会の行っている肝炎患者さんむけの電話相談の活動などについて、説明を受けました。オルタンスさんも患者団体の代表として、患者さんの相談にのる活動を行っています。たとえば、ウイルス性肝炎への感染が判明した方の家を訪問して、B型肝炎という病気について説明し、励まし、また、家族の方にも検査を受けてもらうなどといった支援を続けているそうです。

東京肝臓友の会の事務所では、この他、ウイルス性肝炎がどのように理解されているか、患者さんが治療ではなく薬草などに頼るのはなぜなのか、などの話題についても、同じ病気の患者さんの目線で、それぞれの国の経験や風習も紹介し、共感し合いながら、交流が行われました。

熊本大学の研究室を訪問・講演(カニア博士)

7月19日から26日まで、ブルキナファソから来日した2つの患者団体の代表お二人のうち、カニア博士は、期間の後半、熊本大学を訪問しました。

カニア博士の所属する国立ムラズ研究所は、熊本大学と富士レビオ株式会社とともに、高額なPCR検査にかわる、安価で簡易なウイルス量測定の迅速検査キットの研究・開発を共同で行っています。

カニア博士は、そこでブルキナファソにおける肝炎対策の現状と課題について講演を行いました。

ブルキナファソにおけるウイルス性肝炎対策について講演するカニア博士(国立ムラズ研究所。患者団体「アソー・エパティット」創設者・名誉会長)
カニア博士の講演を聞きに来てくださった熊本大学の研究者の皆様と。
熊本大学の田中靖人先生(熊本大学 大学院生命科学研究部 消化器内科 教授。写真左側)にあたたかく歓迎していただきました。

B型肝炎ウイルス量測定の迅速検査キットは、日本発の技術が、アフリカをはじめとした途上国のウイルス性肝炎対策に貢献できる大きな可能性を秘めています。みなさんも、ぜひ、今後にご注目ください。

在ブルキナファソ日本大使館の医務官だった先生からも歓迎

熊本では、在ブルキナファソ日本大使館において、2017年から2020年まで医務官を務められた山下淳二先生に懇親会を開いていただき、熱い歓迎を受けました。

山下淳二先生(写真右端)と一緒に。

肝炎デーにあたって

7月19日から26日まで来日された、ブルキナファソの2つの患者団体の代表(ドラマン・カニア博士=国立ムラズ研究所勤務、患者団体「アソー・エパティット」創設者・名誉会長と、クレール・オルタンス・サノンさん=B型肝炎当事者、患者団体「SOS肝炎ブルキナ」代表)は、隣国ニジェールのクーデターの影響で大変なこともあったようですが、無事に日程を終えてそれぞれ帰国されました。

今回の来日企画をとおして、日本の政治や外交を担う方々、そして医療や国際保健分野で活躍されている皆様には、アフリカをはじめとした途上国においては、ウイルス性肝炎が猛威をふるっていること、それにもかかわらず、国際社会の支援の枠組みから外れてきたことを知っていただくことができ、沢山のあたたかい激励のお言葉をいただきました。

また、日本のNGOのなかからも、アフリカの肝炎対策支援に取り組む新しい動きも生まれました(ブルキナファソに検査機器を贈るクラウドファンディングはこちらで行われています)。

そして、なにより、今回の企画をとおしては、日本の患者・当事者の方たちと、アフリカの肝炎患者・患者団体の方たちが、お互いに活動や病気のことを交流し、国際的な肝炎の克服にむけた気持ちを同じくして、つながることができました。この協力・協働は、国際的な肝炎克服の力になると信じています。

この3年間、コロナ禍をはじめ、たくさんの困難や紆余曲折がありました。しかし、

今日、世界日本肝炎デーにあたり、今回の来日企画も一つの力となって、国連SDGsの目標3にも掲げられている、2030年までのウイルス性肝炎「排除(Elimination)」のとりくみが、いっそう強力にすすめられていくことを願っています。

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