ご存知ですか、注目されない感染症(肝炎)が多くの命を奪っていること。

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佐賀県の江口病院を訪問

7月19日から26日まで来日した、西アフリカ・ブルキナファソの2つの肝炎患者団体の代表(ドラマン・カニア博士=国立ムラズ研究所、患者団体「アソー・エパティット」創設者・名誉会長、と、クレール・オルタンス・サノンさん=B型肝炎当事者、患者団体「SOS肝炎ブルキナ」代表)は、アフリカでB型肝炎の研究にとりくむ島川祐輔医師(パスツール研究所、熊本大学客員教授)とともに、来日期間の最後に、佐賀県の江口病院を訪問しました。

病院見学時に、江口先生(左から4人目)ほか、江口病院の皆様や、実行委員会のメンバーとともに。

江口病院では、理事長の江口ゆういちろう先生をはじめ、多くのスタッフの皆様から、病院の見学や検査の実施、さらには、夜は佐賀県のおいしい食べ物で歓迎会を開いてくださるなど、大変あたたかい歓迎を受けました。

病院見学では、江口先生から病院内をくまなくご案内いただき、また、佐賀県の肝炎医療コーディネーターのとりくみや、こんど日本から贈られる検査機器フィブロスキャンについて、説明を受け、懇談をしました。

佐賀県の広報物を手に話し合う(左から江口先生、サノンさん、カニアさん、島川先生)。

佐賀県では、長く肝がん死亡率全国ワースト1位が続いていましたが、江口先生が佐賀大学の肝疾患治療センターのセンター長だった当時、検査・診察・治療をうながす啓発活動に取り組み、ワースト1位から脱却。江口先生は、いまも厚生労働省の研究班の代表をつとめ、また、肝がんの非常に多いモンゴルなどで、肝炎対策の支援にも取り組んでいらっしゃいます。実行委員会のオンライン学習会でも、モンゴルでの取り組みの経験などを、ブルキナファソの方をふくめて共有してくださるなど、協力していただいてきました。

ブルキナファソからのお二人も、「佐賀県で行ってきたような肝炎患者とのコミュニケーションの改善、啓発活動は、ブルキナファソでも参考になる。帰ったら、大いに取り組みたい」と話していました。

肝炎の検査をしてもらうサノンさん。
フィブロスキャンを手にするカニア博士。

肝臓が硬くなってきた方に治療を行うことは、肝がんの予防のために大切であり、その肝臓の硬さを容易に測定できるのが、フィブロスキャンです。江口先生は、病院での診察はもちろん、モンゴルでの肝炎対策支援などでも、ポータブルのフィブロスキャンを持ち歩き、活用されています。

今回、日本のNGOからブルキナファソの2団体が活用できるように、ポータブルのフィブロスキャンが贈られるプロジェクトも始まっています(クラウドファンディングはこちら)。

この訪問のようすは、NHKやサガテレビ、佐賀新聞に取材していただきました。その日の夕方のニュースでも紹介されました。

患者会の事務所を訪問(サノンさん)

カニア博士が熊本大学の研究室を訪問された頃、ブルキナファソで一番歴史の古い肝炎患者団体「SOS肝炎ブルキナ」代表のクレール・オルタンス・サノンさん(B型肝炎当事者)は、東京肝臓友の会の事務所を訪問して、交流しました。

東京肝臓友の会の行っている肝炎患者さんむけの電話相談の活動などについて、説明を受けました。オルタンスさんも患者団体の代表として、患者さんの相談にのる活動を行っています。たとえば、ウイルス性肝炎への感染が判明した方の家を訪問して、B型肝炎という病気について説明し、励まし、また、家族の方にも検査を受けてもらうなどといった支援を続けているそうです。

東京肝臓友の会の事務所では、この他、ウイルス性肝炎がどのように理解されているか、患者さんが治療ではなく薬草などに頼るのはなぜなのか、などの話題についても、同じ病気の患者さんの目線で、それぞれの国の経験や風習も紹介し、共感し合いながら、交流が行われました。

熊本大学の研究室を訪問・講演(カニア博士)

7月19日から26日まで、ブルキナファソから来日した2つの患者団体の代表お二人のうち、カニア博士は、期間の後半、熊本大学を訪問しました。

カニア博士の所属する国立ムラズ研究所は、熊本大学と富士レビオ株式会社とともに、高額なPCR検査にかわる、安価で簡易なウイルス量測定の迅速検査キットの研究・開発を共同で行っています。

カニア博士は、そこでブルキナファソにおける肝炎対策の現状と課題について講演を行いました。

ブルキナファソにおけるウイルス性肝炎対策について講演するカニア博士(国立ムラズ研究所。患者団体「アソー・エパティット」創設者・名誉会長)
カニア博士の講演を聞きに来てくださった熊本大学の研究者の皆様と。
熊本大学の田中靖人先生(熊本大学 大学院生命科学研究部 消化器内科 教授。写真左側)にあたたかく歓迎していただきました。

B型肝炎ウイルス量測定の迅速検査キットは、日本発の技術が、アフリカをはじめとした途上国のウイルス性肝炎対策に貢献できる大きな可能性を秘めています。みなさんも、ぜひ、今後にご注目ください。

在ブルキナファソ日本大使館の医務官だった先生からも歓迎

熊本では、在ブルキナファソ日本大使館において、2017年から2020年まで医務官を務められた山下淳二先生に懇親会を開いていただき、熱い歓迎を受けました。

山下淳二先生(写真右端)と一緒に。

帰国のお礼

7月28日の世界日本肝炎デーにあわせて、ブルキナファソから来日された2つの患者団体の代表、ドラマン・カニア博士とクレール・オルタンス・サノンさん(当事者)は、日本時間26日の夜、飛行機で日本を離れ、帰国しました。サノンさんは、帰国後、すぐにブルキナファソにおける肝炎デーの企画に参加します。

今回の来日にあたり、多くの皆様にご支援・ご協力をいただいたことに、お礼を申し上げます。途中から、このホームページの更新も追いつかなくなってしまいましたが、来日中の後半の活動のようすについても、今後、順次、ホームページにて紹介してまいります。

引き続き、国会議員を訪問・懇談。オフは東京の観光も。

7月22日の土曜日も、ブルキナファソの研究者・患者団体代表と日本側の交流が続きました。

この日は、アフリカ議連事務局長を務める牧原秀樹衆議院議員(上の写真中央)の事務所を訪問し、ご挨拶とお話をさせていただきました。牧原議員は、島川祐輔医師やブルキナファソからのお二人の話を丁寧に聞いてくださり、また、お話の中では、これまでアフリカの抱える様々な問題に取り組んでこられた経験にも基づいて、様々なアドバイスをしてくださいました。懇談後、カニア博士も、”(ブルキナファソ政府の)保健省の友人とも協力して、アドバイスをいかす活動をしてみたい”と話していました。

そして、来日して以来、はじめての「オフ」となった、この日の午後。ブルキナファソから来日したカニア博士とサノンさんは、実行委員会のメンバーなどとともに、浅草を観光しました。

連日の活動と「時差」のため、お疲れも見えるブルキナファソからのお二人ですが、この日は、東京を楽しんでくださったようで、嬉しく思っています。

患者、国会議員、NGOなどと精力的に交流しています。

ブルキナファソから来日した2人は、日本の国会議員、肝炎患者、NGOなどと精力的に交流しています。

武見敬三参議院議員(写真中央)にご挨拶。ブルキナファソにおける肝炎被害の状況、国際的な感染症対策の枠組みから肝炎が抜け落ちていることなどをお話しし、”肝炎は大きな問題。支援できる体勢をつくってください、大きなところではサポートします”と、激励のお言葉をいただきました。日本とブルキナファソが協力して肝炎の被害のない世界をめざそうというポロシャツ(カニア博士とサノンさんがブルキナファソから持ってきてくださったもの)を身につけて記念撮影。写真右端は、今回の訪日にあたり多くのご支援をいただいている、アフリカ日本協議会・共同代表の稲場雅紀さんです。

東京のアフリカ料理店「カラバッシュ」で実行委員会との歓迎会。カニア博士が”うちで食べているのと同じ味だ”という、本格的でおいしいアフリカ料理を楽しみながら、ブルキナファソと日本のB型肝炎患者のおかれた状況などについて話が広がりました。ふたつの国の肝炎患者の心をつなぐ通訳をしてくれたのは、パリ在住で医学部をめざす高校生です。

駐日ブルキナファソ大使館を表敬訪問。テウェンデ・ポール・スィンガ臨時代理大使(前列左から2人目)をはじめ、大使館のみなさんとお話しさせていただきました。今回の来日実現へのお礼を伝えるとともに、今後のブルキナファソにおける支援事業についても、ご協力をお願いしました。右の絵は、カニア博士とサノンさんがはるばるブルキナファソから持ってきてくださった、日本とブルキナファソの友好と肝炎対策における協力が発展することを願う絵です。7月23日の患者交流会などでもご覧いただけます。

今回の来日企画をうけて、ブルキナファソにおける肝炎対策支援事業をたちあげた国際NGOピースウィンズ・ジャパンの事務所では、ブルキナファソの2団体と日本のNGOの3団体でとりくむ事業の内容について、打合せを行いました。

ピースウィンズ・ジャパンが開いた記者会見にも参加。カニア博士とサノンさんは、ブルキナファソにおける肝炎ウイルスの感染拡大の経緯についてなど、記者からの質問に答えました。ピースウィンズ・ジャパンは、ブルキナファソの一般市民も使えるように、まず、検査機器フィブロスキャンを現地に贈ることを発表し、その購入費用のクラウドファンディングも行うことを発表しました。

ブルキナファソから研究者・当事者が来日しました

いよいよ、アフリカと日本のウイルス性肝炎「排除」をめざす交流が、対面で始まりました。

7月19日の夕方、まずは、所用のためフランスに滞在されていたドラマン・カニア博士(ウイルス学研究者、国立センター・ムラズ=ムラズ研究所、肝炎患者団体「アソー・エパティット」創設者・名誉会長)が羽田空港に到着しました。

続けて、7月19日の夜、24時間以上をかけて、ブルキナファソからクレール・オルタンス・サノンさん(患者団体「SOS肝炎ブルキナ」代表、B型肝炎当事者)が成田空港に来日しました。

お二人とも長旅にもかかわらず、お元気なようすで、ほっとしました。この交流企画は、コロナ禍のため3年間延期を余儀なくされてきたので、この日を無事にむかえられ、実行委員会は本当に感無量です。今回の企画を応援してくださっている多くの皆様に感謝いたします。

ブルキナファソから来日したお二人は、7月20日から、日本の患者・当事者、研究者や医師・医療関係者、政治家・行政機関、NGO、市民団体や企業などと交流し、意見交換を行います。また、ブルキナファソに肝炎検査機器「フィブロスキャン」を贈るためのクラウドファンディングも始まります。皆様もひきつづき関心を寄せていただければ幸いです。

ブルキナファソからのお二人の講演予定などはこちら

私たちにはアフリカの肝炎の現実が、他人事には思えません。≪2022年7月28日の世界肝炎デーにむけて≫

アフリカの肝炎患者の苦しみは、確かに遠い国のきびしい現実です。

でも、同時に、私たち日本の肝炎患者がかつて体験してきたことと、とても良く似ています。だからこそ、

私たちにはアフリカの肝炎の現実が、他人事には思えません。

アフリカから、世界からウイルス性肝炎の被害をなくすために、みなさんのご支援をよろしくお願いいたします。

(写真)肝炎のワクチンを運ぶことも困難を伴う。写真提供・島川祐輔先生

私たちは、アフリカでB型肝炎とたたかっている医師の島川祐輔先生(パスツール研究所主任研究員、熊本大学客員教授)のお話を聞く機会があり、日本とアフリカの肝炎患者が力をあわせ、WHO・SDGsの「Elimination(肝炎ウイルス排除)」目標の達成をはじめ、世界中からウイルス性肝炎で亡くなる人、苦しむ人をなくしていくために協力していきたい、その思いで、この実行委員会を立ち上げました。2020年7月に西アフリカのブルキナファソから、患者団体を招聘して交流する予定でしたが、コロナ禍により、ここまで実現することができていないのは残念です。

2023年7月に、アフリカの患者団体を日本に招聘します。

今年2022年、いよいよ2023年7月の招聘をめざして、活動を再始動しました。この2年間、私たちはアフリカの肝炎患者の状況について学び、また、日本の肝炎患者一人一人のストーリーを掘り起こして、議論を重ねてきました。その結果、今では、自信をもって言うことができます。

アフリカの肝炎患者の苦しみは、確かに遠い国のとても厳しい現実です。でも、同時に、私たち日本の肝炎患者がかつて体験してきたことと、多くの共通点を持っています。

「病院に行っても仕方ない」という思い

サハラ砂漠以南のアフリカの多くの国では、検査でB型肝炎ウイルス陽性と分かっても、医療機関にかかる(かかれる)人は少なく、なかには、呪術師や薬草に頼り、財産を投げ打ってしまい、あるいは、かえって病状を重くしてしまう人も少なくないと言います。

私たち、日本の肝炎患者も、かつては「治療法がない」「不治の病」と言われ、「病院に来てもできることがない」「B型肝炎は8割の人は発病しないから、発病しないことを祈るしかない」など言われる時代が長くありました。すがるような気持ちで、効果の分からない健康食品でも、お祓いにでも、何にでも、もしかしたら病気を治せるかもしれない、と、ただその一心で財産を投げ打った同じ病気の仲間もたくさんいました。

(写真)日本では肝炎の治療必要性の判定に欠かせないPCR検査の設備。高価なためにアフリカではまだ普及していない。

いま、日本のB型肝炎患者には、2000年から医療保険が適用になった核酸アナログ製剤をはじめ、病気の進行を食い止め、症状の改善にもつながる治療法があります。C型肝炎患者には体内からウイルスを排除できるDAA(直接作用抗ウイルス剤)などの治療法もできました。そして、肝炎患者や心ある肝臓病の医師らが、自治体や政治に働きかけ、多くの患者がこれらの治療を経済的な心配なく受けられるようにと作ってきた助成制度もあります。

しかし、このような治療法も、まだサハラ砂漠以南のアフリカでは使うことはできず(多くの患者はB型肝炎)、かつての私たちと同じ苦しみをアフリカの人たちが味わっていることを考えると、なんとかして支援をしたいと心から思うのです。

「家族にも言えない」という思い

サハラ砂漠以南のアフリカの多くの国では、B型肝炎について正しい知識が普及しておらず、感染が分かっても、家族にも言えないという人が少なくないそうです。

私たちの暮らす日本でも、ウイルス性肝炎に対する理解は、まだ不十分と言わざるをえません。B型肝炎、C型肝炎ともに感染経路が血液などに限定されており、通常の日常生活での感染は考えられないにもかかわらず、世間の偏見や差別には大変つらい思いをしてきました。家族や職場の上司や同僚、医師や看護師などの温かい言葉に支えられた患者もいる一方で、「職場に言えない」「家族にも言えない」という状況を今も抱えている人は少なくありません。

実行委員会に参加している私たち肝炎患者は、肝炎の患者会や、肝炎の訴訟を通して、多くの心ある方たちに出会い、そして何よりも、同じ病気の仲間と出会うことができました。同じ病気の仲間との交流は、肝炎患者を支える様々な制度を改善していく力であり、同時に、この病気とたたかう勇気や人生のよろこびを与えてくれるかけがえのない場でもあります。

行政の方針決定に患者団体をはじめ市民社会が参画している国ほど、肝炎対策が進んでいるという調査もあるそうです。アフリカでも患者の団体が発展し、多くの肝炎患者がお互いに助け合い、そして行政や世界に働きかけができるように、私たちは、お互いの取組みの成果や苦労について、アフリカの肝炎患者のみなさんと交流したいと思っています。

世界の肝炎患者が力をあわせて

ウイルス性肝炎は、今では、早期に発見し、適切な治療を受けることでコントロールのできる病気になっています。C型肝炎に続いて、B型肝炎でも「根治薬」の登場も期待されています。だからこそ私たちは、アフリカの肝炎患者のみなさん、世界の肝炎患者のみなさんと交流を広げ、誰もが検査や治療にアクセスできる社会、ウイルス性肝炎による被害のない世界を目指してまいります。みなさんのご理解とご協力、きびしい状況を抱えるアフリカの肝炎患者へのご支援を心からお願いいたします。2023年7月のブルキナファソの患者団体来日にむけて、私たちとともに、その機運をもりあげていっていただければ幸いです。

2022年7月19日 日本アフリカ肝炎交流実行委員会事務局一同

リーフレットを作成しました

リーフレットを作成しました。

アフリカにおけるウイルス性肝炎問題を紹介するリーフレットを作成しました。来年まで延期せざるを得なくなった本企画ですが、その期間を有効に使って準備をしたいと考えています。

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